断熱等級4の義務化で何が変わった?快適な住まいに必要な断熱性能とは
2025年4月、すべての新築住宅に断熱等級4以上の適合が義務化されました。 かつて「最高等級」として位置づけられていた基準が、今では「建築確認を取得するための最低要件」へと変わっています。
この制度変更は、これから家を建てようとしている方にとって大きな転換点となりました。 今お住まいの家の断熱性能が気になり始めた方も多いかもしれません。
ここでは、断熱等級4の基準や義務化によって変わったことをわかりやすく解説するとともに、新築・リフォームそれぞれの視点から、快適な住まいづくりのポイントをお伝えします。
断熱等級とは?まず押さえておきたい基礎知識
住宅の断熱性能を示す指標として「断熱等級(断熱等性能等級)」があります。 2000年に施行された「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」で定められた基準で、現在の等級では1から7までの7段階で評価されるものです。 数字が大きいほど断熱性能が高く、室内の熱が外に逃げにくいことを意味しています。
断熱等級の評価には「UA値(外皮平均熱貫流率)」という数値が使われます。 UA値とは、住宅の外皮(屋根・外壁・床・窓など)を通じて室内から逃げる熱の量を示したもの。 数値が小さいほど熱が逃げにくく、断熱性能が高いということになります。
日本は北海道から沖縄まで気候が大きく異なるため、地域を8つに区分し、それぞれの気候条件に応じた基準値が設定されました。 埼玉県は主に5〜6地域に該当し、断熱等級4をクリアするにはUA値0.87以下が求められます。
断熱等級の一覧
| 等級 | 基準の目安 | 政策的位置付け(2025年12月時点) |
|---|---|---|
| 1〜3 | 1980〜1990年代の旧基準 | 建築不可(違法) |
| 4 | 1999年「次世代省エネ基準」 | 現在の法的最低基準 |
| 5 | ZEH基準相当 | 2030年に義務化予定 |
| 6 | HEAT20 G2相当 | 推奨水準(長期優良住宅) |
| 7 | HEAT20 G3相当 | 最高水準 |
等級4は、壁や天井だけでなく窓や玄関ドアなどの開口部にも断熱が求められる水準です。 ただし、1999年に制定された基準がベースとなっているため、現在の技術水準からすると「最低限」の性能といえます。
等級5以上は2022年に新設された上位等級で、より高い快適性と省エネ性能を実現できます。 特に等級6・7では、部屋間の温度差が大幅に解消され、冬場でも家全体が暖かい環境を保ちやすくなります。
2025年4月、住宅の省エネ基準はこう変わった
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2022年6月に公布された改正建築物省エネ法により、2025年4月からすべての新築住宅・非住宅に省エネ基準への適合が義務化されました。
これまで省エネ基準の適合が義務づけられていたのは、床面積300㎡以上の中・大規模建築物のみ。 個人の住宅や小規模なアパートなどは対象外でした。 今回の改正により、用途や規模に関係なく、すべての新築建築物が省エネ基準を満たさなければ建築確認が下りなくなっています。
省エネ基準への適合には、以下の両方をクリアする必要があります。
- 断熱等級4以上
- 一次エネルギー消費量等級4以上
つまり、2025年4月以降、断熱等級3以下の住宅は建てることができなくなりました。 等級4未満の住宅は「違法建築」となるため、新築市場には存在し得ないということです。
2022年3月までは断熱等級4が最高等級でした。 それがわずか3年で「最低限」へと変わったことになります。 この急速な基準引き上げの背景には、2050年のカーボンニュートラル実現に向けた国の政策がありました。
さらに、2030年度には断熱等級5(ZEH基準)が新たな最低基準として義務化される予定です。 欧米ではすでに等級7レベルが標準となっている国もあり、日本の住宅の断熱性能は国際的に見ると低い水準にとどまっています。 今後もさらなる基準の引き上げが進むと考えられるでしょう。
【新築を検討中の方】等級4は「最低限」。どこまで上を目指すべき?
これから新築住宅を建てる方にとって重要なのは、「義務化された等級4で十分なのか、それとも等級5以上を目指すべきなのか」という判断でしょう。
結論から言えば、等級4はあくまで「市場への参入要件」であり、快適な住環境を保証するスペックではありません。
HEAT20という民間の断熱基準では、等級4は「冬の室内の最低体感温度が8℃を下回らない程度」と定義されています。 暖房を切った状態では決して暖かいとはいえないレベルです。 部分的な暖房に依存する傾向が強く、廊下や脱衣所との温度差が残りやすいという課題もあります。
等級5以上になると、体感できる快適さが明らかに変わってきます。 等級5はZEH基準相当で、断熱材の厚みは等級4の約1.2倍。 等級6・7では、家全体の温度差が解消され、少ないエネルギーで全館暖房が可能になります。
等級アップにかかるコストの目安
| 等級変更 | 追加費用の目安 |
|---|---|
| 等級4 → 等級5 | 約10万円〜30万円 |
| 等級4 → 等級6 | 約60万円〜100万円 |
| 等級4 → 等級7 | 約250〜400万円 |
※家の広さや地域、選ぶ断熱材や窓・サッシの種類によって変動します。
2030年には等級5が義務化される予定です。 2025年現在に等級4ギリギリで建築された住宅は、わずか5年後には「既存不適格(最新基準を満たさない性能を持つ住宅)」となります。 不動産価値の維持という観点からも、現時点で等級5以上、できれば等級6を確保しておくことが資産防衛上の重要な選択となるでしょう。
住宅ローン控除の「断熱格差」に注意
断熱等級の選択は、住宅ローン控除にも大きく影響します。
2024年1月以降に建築確認を受けた新築住宅について、省エネ基準(等級4以上)に適合していることが住宅ローン控除適用の「絶対条件」となりました。 等級4を満たさない住宅は、減税メリットがゼロになります。
さらに重要なのは、等級によって住宅ローン控除(減税)の対象となる借入金額の上限に格差があるという点です。
| 住宅の性能 | 借入金額上限の目安(2025年入居) |
|---|---|
| 長期優良住宅・低炭素住宅 | 4,500万〜5,000万円 |
| ZEH水準住宅(等級5) | 3,500万円 |
| 省エネ基準適合住宅(等級4) | 3,000万円 |
たとえば5,000万円のローンを組む場合、長期優良住宅であれば全額が控除対象になり得ますが、等級4の住宅では3,000万円までしか対象となりません。 13年間の控除期間で数百万円規模の差が生じる可能性があります。
等級4は「減税を受けるための最低ライン」ではあるものの、「経済的メリットを最大化するための正解」ではないことを認識しておきましょう。
住宅金融支援機構の「フラット35」を利用する場合も、断熱等級4以上が条件となっています。 さらに断熱等級5以上の住宅に対しては、当初5年間の金利を0.25〜0.75%引き下げる「フラット35S」というメニューも用意されています。
【リフォームを検討中の方】今の家の断熱性能、大丈夫ですか?
新築住宅には義務化の基準が適用されますが、既存住宅の状況はどうなっているのでしょうか。
住宅リフォーム推進協議会の資料によると、2019年度時点で断熱等級4(省エネ基準)に相当する断熱性能を持つ住宅は、全国の住宅ストック約5,000万戸のうち約13%程度にとどまっていました。 約3割の住宅は断熱等級1の「無断熱」に相当する性能であり、9割近くの住宅が断熱等級4未満という状況です。
(このデータは約6年前のものであり、その後の新築・リフォームにより改善が進んでいる可能性はありますが、依然として多くの既存住宅が低い断熱性能にとどまっていると考えられます。)
築年数から見る断熱性能の目安
| 築年数 | 断熱性能の傾向 |
|---|---|
| 1980年以前 | 断熱材がほとんど使われていない可能性が高い |
| 1980〜1998年 | 現在の基準からすると断熱性能は不十分 |
| 1999年以降 | 等級4相当の可能性あり(施工会社による) |
「冬になると家の中が寒い」「暖房をつけても足元が冷える」「光熱費が年々高くなっている」
こうした悩みをお持ちの方は、断熱性能の不足が原因かもしれません。
ヒートショックのリスクに注意
特に注意したいのが「ヒートショック」のリスクです。
ヒートショックとは、急激な温度変化によって血圧が大きく変動し、心臓や血管に負担がかかることで起こる健康被害のこと。 暖かいリビングから寒い脱衣所に移動し、熱いお湯に浸かるという一連の動作の中で、血圧が乱高下することがあります。
東京都健康長寿医療センター研究所の2011年時点の推計によると、年間約1万7000人がヒートショックに関連して入浴中に急死したとされています。 この数字は当時の交通事故死者数の約4倍にのぼり、その約8割が高齢者でした。
※14年前のデータではありますが、住宅内の温度差が健康に与える影響の深刻さを示す重要な統計として、現在も広く引用されています。
興味深いのは、ヒートショックの発生件数が北海道では少なく、比較的温暖な地域で多いという事実。 北海道の住宅は断熱性能が高く室内が暖かいのに対し、温暖な地域では「冬でもそこまで寒くならない」という認識から断熱対策が不十分なケースが多いためと考えられています。
医学的・建築的見地から「健康を維持できる快適な温度環境」を実現するためには、家全体の温度差を抑制できる高い断熱性能(等級6以上推奨)が必要とされています。 断熱性能は単なる省エネ指標ではなく、「家族の命を守るための安全装置」として捉えるべきでしょう。
断熱リフォームの選択肢と費用相場
断熱リフォームの中でもっとも費用対効果が高いとされているのは、窓の断熱改修です。 住宅から逃げる熱の約50〜70%は窓を通じて失われるといわれており、内窓の設置だけでも大きな改善が期待できます。
| リフォーム種別 | 費用相場(目安) | 工期 |
|---|---|---|
| 内窓設置 | 5万〜20万円/1箇所 | 1〜2日 |
| 天井断熱(20㎡想定) | 8万〜16万円 | 2〜4日 |
| 全体断熱(壁・床・天井・窓) | 100万〜500万円 | 2週間〜2ヶ月 |
※掃き出し窓(大きな窓)は10〜30万円前後になることもあります。
窓の断熱改修は比較的安価で効果を実感しやすく、壁・天井・床への断熱材追加や玄関ドアの交換と組み合わせることで、より高い断熱効果を得ることができます。
断熱リフォームの補助金について
断熱リフォームには国や自治体の補助金制度が用意されていますが、2025年12月時点では、今年度の主要な補助金事業は既に申請受付を終了しています。
| 制度名 | 2025年12月時点のステータス |
|---|---|
| 子育てグリーン住宅支援事業 | 予約受付:2025年11月14日終了 |
| 先進的窓リノベ2025事業 | 予約受付:2025年11月14日終了 |
| 既存住宅における断熱リフォーム支援事業 | 予算状況により終了の可能性あり |
これらの補助金申請には、契約締結から着工、予約申請までのリードタイムが必要です。 12月時点で未着工の案件が年内の完了報告・申請に間に合う可能性は極めて低いため、2025年度の補助金活用は実質的に困難な状況です。
2026年度の新制度を待つという選択肢
例年、補正予算案の閣議決定を経て翌年度の事業が開始されるまでには数ヶ月のラグが発生します。 2025年12月から2026年春頃までは、いわゆる「補助金の空白期間」となる可能性が高いでしょう。
この時期に焦って契約・着工することは、以下のリスクを伴います。
- 2025年度予算は既に終了しているため受給できない
- 2026年度事業の「契約日・着工日」要件が発表前のため、それ以前に契約すると補助金がもらえない可能性がある
緊急を要する場合を除き、2026年度の補助金制度の概要発表を待ち、着工タイミングを戦略的に調整することが経済合理性の高い選択となります。
断熱リフォームを検討されている方は、来春以降に開始が見込まれる新制度の情報を注視しながら、施工業者と相談されることをおすすめします。
断熱性能を高めることで得られるメリット
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断熱性能を高めることは、単に「寒さ対策」にとどまりません。 ここでは、断熱性能の向上によって得られる主なメリットを整理してみましょう。
年間を通じて快適な室内環境
断熱性能の高い住宅では、外気温の影響を受けにくくなります。 冬は室内の暖かさが逃げにくく、夏は外の暑さが入りにくいため、一年を通じて安定した室温を保ちやすくなるでしょう。
特に等級6以上の住宅では、部屋ごとの温度差が大幅に解消されます。 廊下や脱衣所で「ヒヤッ」とする不快感が軽減され、家全体が快適な空間になります。
光熱費の削減
断熱性能が向上すると、冷暖房効率が上がります。 エアコンの稼働時間が短くなり、設定温度も控えめで済むようになるため、毎月の光熱費を抑えることができます。
近年の電気代・ガス代の高騰を考えると、断熱性能の向上は家計にとっても大きなメリットとなるでしょう。 初期投資は必要ですが、長期的な光熱費削減と税制優遇を考慮すれば、十分に回収できる可能性があります。
健康リスクの軽減
前述のとおり、ヒートショックのリスク軽減は断熱性能向上の大きなメリットです。 その他にも高断熱住宅に住むことで、肌の乾燥やかゆみ、風邪、腰痛などの症状が改善したという報告もあります。
冬でも室温が安定していると血行が良くなり、体への負担が軽減されるためと考えられています。 特に高齢の方や持病をお持ちの方にとって、暖かい住環境は健康維持に欠かせない要素といえるでしょう。
2025年4月の義務化により、断熱性能は住宅の「基本性能」として位置づけられるようになりました。 しかし、義務化ラインである等級4は「最低限」であり、「快適」を保証する水準ではありません。
新築住宅を検討されている方は、2030年の等級5義務化を見据え、等級5以上、できれば等級6を目標とされることをおすすめします。 初期費用は多少かかりますが、光熱費の削減、税制優遇(借入金額上限の格差)、住宅ローン金利の優遇、そして将来の資産価値維持を総合的に考えると、長期的には十分に回収できる投資となる可能性があります。
既存住宅にお住まいの方は、まずご自宅の断熱性能がどの程度なのかを把握することから始めてみてはいかがでしょうか。 築年数や体感的な寒さ、光熱費の推移などから大まかに推測することもできますし、専門家による診断を受けることでより正確に把握できます。
断熱リフォームをご検討の場合は、2026年度の補助金制度の発表を待ってから着工タイミングを決めることで、経済的な負担を軽減できる可能性があります。
門倉工務店では、新築・リフォームともに、お客様のご予算やご要望に合わせた断熱性能のご提案を行っております。 「等級5と6、どちらを選べばいいの?」「うちの家は断熱リフォームでどこまで改善できる?」など、断熱に関するご相談がありましたら、お気軽にお問い合わせください。
快適で健康的な暮らしは、住まいの断熱性能から始まります。